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『菜食主義者のための料理』とは

戒律上、ヒンドゥー教徒のうち上位カーストの者やジャイナ教徒などは肉食をしないため、インドでは菜食主義者のための料理が古くから発達しています。また、ヒンドゥー教、仏教、ジャイナ教、シーク教など、インド発祥の宗教はどれも菜食を奨励する傾向がある一方、イード・アル=アドハーなど食肉の消費が宗教儀礼の中で重要な位置を占めるイスラム教では肉食が肯定されています。また、屠殺業に携わるダリットの社会では、肉を食事に取り入れてきた長い伝統があります。このように、インドの菜食と非菜食の伝統を宗教やカーストと切り離して論じることは非常に難しいのです。 街のレストランでは菜食主義者と非菜食主義者の席は明確に分けられており、両者が同席することはありません。

インドの菜食料理では、脂やゼラチンなどを含む一切の動物の肉や動物を殺して得られる食材を使用せず、卵も使いません。しかし動物を傷つけずに得られる乳製品はむしろ多用されるため、インドの菜食主義者のほとんどは乳菜食主義者(ラクトヴェジタリアン)です。また、各種の豆類、穀類、ナッツなどもよく使うため、肉食をしなくても十分に栄養バランスのとれた食事ができます。ヒンドゥー教やシーク教の寺院で参拝者に無料でふるまわれる聖餐は菜食料理です。

ジャイナ教徒の中でも最も敬虔な信者は、植物であっても葉、茎、豆だけを食べ、ニンジンやダイコン、ニンニク、タマネギ 、芋などの根の部分を食べません。これは「土中の虫などの生き物を殺さないため」ということが理由の一つ。さらに「その部分が『体』にあたる」という枝葉ではなく本体部分を殺すことにつながるとの考えから、できる限り植物さえも殺生することを避けることによります。同様に、ハチを殺す危険の大きい蜂蜜なども摂りません。タマネギやニンニクなど五葷の摂取を避ける習慣はバラモンにも見られます。一方、西ベンガル州やアッサム州など東インドは菜食主義者よりも魚を食べることを肯定するペスクタリアンであることが多いようです。

非菜食の料理にも多くの種類があって、中央アジアからイスラム教徒の征服者によって伝えられたものが多いようです。戒律上、全てのヒンドゥー教徒は牛を聖なるものとして食べず、全てのイスラム教徒は豚を汚れているものとして食べないので、一般にそれら由来の物は使われず、鶏肉、羊肉、山羊肉、魚介類などが非菜食料理の主な食材となります。最もよく食べられる肉は比較的値段の安い山羊肉で、インドではマトンと英訳される慣例がありますが羊の肉ではない。鶏肉は比較的値段が高くなっています。インド国民の所得が増加するに従い、食肉の消費量は増加しています。